特集

【第14回公演】インタビュー00 松永太郎(演出家)

松永 太郎 (ニックネーム:タローさん)
ヒメヒコの先生

☆コロナ禍でヒメヒコを導く、太郎さん!
ヒメヒコ歴:14年目

― では「太郎さん」からお話を聞きたいと思います。よろしくお願いします!

お願いします。

― まず、今年(2020年)の2月、13回目のヒメヒコ公演、できてラッキーだったなって思ったんですよ。その後、緊急事態宣言とかが出たじゃないですか。その後いろいろ大変ではあったと思いますけど、公演ができたことは、良かったですね。

ひやひやしましたね。あと1,2週間遅かったら、たぶんね~・・・。

― やっぱり、そんなだったんですね。

それは良かったですけど、でもやっぱり今年は、例年以上にメンバーが入れ替わったんですね。卒業生が多くて、という年だったので。にもかかわらず、スタート時点で稽古ができない時期がありましたから、本来は新しいメンバーになって、4月からから回数を重ねていくんですけど、スタートで練習できないという年は初めてっだったもんですから、非常に不安もありましたし、チーム作りなので、会えないっていうのが、やはり技術以上にヒメヒコには痛手だったですね。

― そうだったんですね。その間、リモートとか、全国的には学校や会社でもやってましたけど、何か工夫されたんですか。

リモートでやりましたね。練習を。

― みんなが顔が見えるようにしたんですか?

みんながこっちの顔が見えるようにして・・・。

― リモートでは、どんな発信をされていたんですか?

基礎的な体力づくりのものを・・・

― へ~、体力作り・・・

カメラの向こうでみんながやってると思って、一緒にやっている感じで。

― すごい!ホントに基礎の部分からですね。このミュージカル見といて、とかではなく、何かをしてもらう、活動を・・

そうですね。一緒にやりましょうと。

― 1年生の子とか踊りを覚えたりしないといけないじゃないですか。それは、どのように指導されたんですか?

いや、ほとんど具体的なその振り付けとかはできてないですよね。その映像資料を渡したりとかぐらいはできますけど。

― そうなんですね。この前、文化祭見に行ったんですよ。そしたら、結構すっごいみんな踊れたので、緊急事態宣言が解かれて数カ月しかたっていないのに、すごい踊れてたというか、いい舞台だったので、裏で?みんな練習し合ってたのかな、と思って。

そうですね。リモートの頃に、とにかく基礎体力的なトレーニングだけはしっかりやっておく、というのをやっていたので、その後、稽古が再開してから、そのおかげで・・・

― へ~、体力作りか~。そういうトレーニングって大事ですね~。

めちゃくちゃ大事ですね。どんなに振りとか演技を説明しても、ベースになるのはやっぱり体なので。

― さすが、着眼点が違いますね~! 普通、家で振りを覚えるとか、そっちに行くじゃないですか。ホントに基礎の基礎で、一番大事なところですね。

そうですね。ホントに基礎ですね。基礎がないと。

― 昨年のインタビューでも、体力が大事っていうのは仰っていましたもんね。

何の、どんな種目でも基礎がしっかりしていないと、上には行けないというか。今年はその基礎の大事さを、より改めて感じましたね。

― そうなんですね。

 

― 太郎さんはプロなので、気持ちが焦ってどう、とかいうことはなかったと思うんですけど、なんかこう、どうやってやっていこうっていう気持ちの持っていく行き場所というか、それはどんな感じでしたか?

ん~、気持ち系っていうか、考えるのは、こういう文化とか芸術みたいなもの、その価値というか、存在意義ですよね。直接それで病気が治るわけでもないし、お腹がいっぱいになるわけでもないじゃないですか。だけどこういう時に、何の役に立つのか、なぜそういうものが存在するのかってことを、考える時間にはなりますよね。
やっぱり、僕らはそういうのが大事だって信じてやっているわけですけど、世の中的には難しい時期ですよね。でも、全国的、世界的に芸術の方々が、こういう時だからこそ、ちゃんと意義をしっかりと打ち出してこうという、そういう流れもあったので、改めて原点を考える機会でしたよね。

― そういう意味で刺激というか、何か情報を得て、そこに通じるものとか発見とかありましたか。

そうね~、いろいろあったと思うんですけど、イベントが少なかったので、時間がある程度あったわけですよ。だから、毎年やってるんですけど、台本をまた読み返して、演出とか新しいシーンを考えたり、新しい曲を考えたりする時間は取れましたね。

― それはいい時間でしたね~。

それと、時間がない中でメンバーが変わっているっていう中だからこそ、やっぱり効率的なというか、いつもより不利な環境ではあるので、そこでどのようにクオリティーを高めていくかっていうことは考えましたね。

― 再開されて、みんなと会って、いつもと雰囲気は違いましたか? 久しぶりに会って。

よりこの場を必要としてくれてるんだなと思いました。

― なるほど。やっぱり居場所ですよね。

居場所ですよね。自分が何かをぶつけられるというか、努力できる場所というか。

― たぶん、家にいないといけないとか、外に出てはいけないとかをみんな経験したと思うので、友達に会うとか、他の誰かに会うとか、その大切さじゃないですけど、子どもたちもそれを実感したんじゃないかなって思います。

そうですね。直接人と会って話ができるとか、ふれあいが持てるとか、当たり前のことが制限された時に、初めてその価値を感じたというのは、みんなあると思いますね。

― はい。真剣みも、ま、いつもみんな真剣ですけど、今まで以上の努力というか、濃い時間を過ごさないといけないなって、みんな思ってるんじゃないですかね。

― 今年は1年生の元気な子がいっぱい入ったみたいですけど、雰囲気はどんな感じですか(笑)

(笑)1年生のフレッシュな感じですね。今年のカラーは(笑)

― 今年も山登りあるって聞いたんですけど・・・

はい、ありますね。

― あれで、みなさん結構鍛えられるので、その成長が楽しみですね~。この前の練習の時は、山登り前でみんな楽しい楽しいで元気が良くて、でしたけど、山登りで修業した後は、みなさん悩むというか、(ヒメヒコ演技の世界の)深いところに入っていくので、それがまた楽しみだなと思っています。

そうですね。

― やっぱりみんな、ガラッと変わりますもんね。

変わりますね~。

― 昨年は確か山を二つ越えた、とか新しい挑戦だったと思うんですけど、今年もですか?

今年はまた、さらにコースが長くなりますね。

― え~、そうなんですね(笑)。わぉ、そうなんだ・・・へ~。生きるってことを身に染みて体験できる活動は大切ですね。

「おおすみ大好き~!」(ヒメヒコの中の叫び)って言ってる以上は、大隅のことを語れる高校生になってほしいし、じゃあ何があるのかなって考えた時に、一つは風土というか、その自然環境だったり、でそれを本人たちが体感していて、その魅力を知っている、語れるというのは大事なことなので、そういう意味では、こういう活動を通して、大隅というところに興味を持ってほしいですね。

― あれは気持ちがないと、心からから叫べませんもんね。

(笑)そうそうそうそう。あれ、気持ちがなかったらウソですよ(笑)。ホントに好きか?っていう(笑) あの言葉を本当にするには、稽古場以外の活動も大事だと思っていて、だからこれまでの14年で、合宿したりキャンプしたり、田植えしたり稲刈りしたり、今一生懸命やってるのは郷土芸能ですよね、郷土芸能に参加したりっていうのを通して、それで本当に大隅大好きな高校生ですよっ、ていうふうにならないと、ウソになると思うので。

― そうですよね~。

稽古した方が、舞台のクォリティーとしては効率的にはいいんでしょうけど、その「おおすみ大好き!」をウソにしたくないので。

― そうですね。それこそ、そこが原点ですもんね。

そうですね。

― 友達がいて、楽しいって簡単なものではない・・・

それだけではないですよね。

 

― 太郎さんが、今年この時期だからお話したいことというか、皆さんに伝えたいことって何かありますか。

そうね~・・・今年はやっぱり、こういうコロナの状況にあって、この舞台っていうものが持っている、「心から」感動することとか、何か頑張ろうって思えるような力を与えるってこととか、そういうことを創る側である僕らも、より意識して、こういう時期だからこそ本当に必要だと思ってもらえるものを創っていきたいなっていう・・・厳しいけど、勝負をしないといけないなっていうのはありますね。

体を治す薬とかと同じように、心を直す薬であったり、栄養分というか、(心の)ご飯であったり、それはお客さんから評価されるわけですよね。この時期に「これ必要なのか」という厳しい判断をされる年だと思うので、やっぱり必要だね、こういう感動とか心の栄養とか必要だねって思ってもらえるようなものを創らないといけないな、という、非常に「使命感」のようなものがありますね。

― 「使命感」ですね!ホントにこの状況だから、こそですよね。人はこの状況で何を求めているのか、ということを考えると、おっしゃる通りで、薬や健康もそうなんですけど、「心の潤い」って、生きる力になるっていうのがありますもんね。

そうですね。

― 子ども達も、今年のインタビューで公演のPRをしてもらった時に、「コロナだけど、ヒメヒコの公演を観てもうらことで元気をもらってほしい」って言ってたんですよ。ホントそこだと思うんですよ。何のために観に来てもらうのかって、やっぱり「心の糧」ですよね。それが本当にみんなの舞台で伝わるといいなっていうのがあるし、伝え方が楽しみだなって思いますね。

意外とそういう文化とかって、わりと世の中がいい時っていうより、悪い時の方が進歩したりするんですよね。歴史を見ると。

― あ~、なるほど。

それはやっぱり、こういうことなんだろうな、っていうか、こういう時期にどういう意味があるのかって、真剣に向き合うからかもしれないですよね。

― 今回環境が変わったじゃないですか。で進化するということは、今までと違うやり方で何かを挑戦していくということだ思うので、その辺をみんなが考え出して、生み出していくから、そうなっていくのかもしれないですよね。

そうですね。いろいろ新しい価値観が生まれているはずなんですよね。

― 特に芸術の方とかいろんなことされているので、そこで今までふれられなかったものが、ふれられてきたりとか、刺激があったりとか、見方が変わったりとか、そういう改革とかは起きていますよね。

そうですね。あともう一つ確実に言えるのは、今リモートとかでもそうですけど、大隅半島って、立派な「はじっこの地」・・・

― 「大きい隅」ですもんね(笑)

この地域にも価値があるんだという、中央に行くことが全て価値があるんじゃないっていう考えが、確実に前進したわけですよね。リモートでできるわけだし。で、いろんなことを我慢せざるを得なかったんですけれども、我慢できたわけじゃないですか。だからやっぱり、それは大きい改革ですよね。

去年、公演に来てくれた石田先生がおっしゃっているのは、このコロナ禍で、二酸化炭素が激減したんですよ。

― あ~、なるほど~。

結局、平和な時代にどれだけ削減、削減って言ってもできなかったことが、制限の中で実現できたわけですよ。

― へ~。

だからまあ、ことはそんなに単純なことではないんだけれども、確実に、地方で豊かに暮らしていけるっていう考え方は、前進したということですね。

― 都会に住んでいた人が地方に移り住むとか、ありますよね。

かなり促進してますね。

― 今、インフルエンザも減ってるみたいですしね。

これだけマスクしてますからね~(笑)。

― (笑)衛生管理も進歩していきますからね。

 

― 少し話は変わりますが、今ヒメヒコの練習の始まりに「This is me」を歌っていますよね。あれは、何か意図的なものがあるんですか。

あれは一つは、英語の歌で、英語なんだけれども、音で覚えるんじゃなくて、ちゃんと歌詞の意味からやりたかったんで。結果、みんなが英語に興味を持つようになったんですけど(笑)、最初の頃なんか、完全に英語の授業ですよ(笑) 音楽の授業じゃなくて。

本当に理解していないと歌えないんだっていう。それを日本語に戻した時に、記号として発声しているんじゃなくて、ちゃんと日本人だからこそ表現できる細かいニュアンスまで、細かく理解できているかということになるんですよ。日本語の歌とかもやっぱり、ただの記号を歌いがちになってしまうんです。それで、英語の歌やって、意味をちゃんと調べて、その意味、言葉をちゃんと音に乗せていくっていう、わざと面倒くさいことをやって、っていうのはあります。

― 意味を自分の中に落とし込んで、その感情を音に乗せて表していくってことですね。なんか、すごくいい歌詞っていうか、励まされる歌じゃないですか。みんなが、どの人たちも価値がある、っていう、だからみんなそれを、自分もそうなんだって歌うってことなのかなって思ったんですけど。

まさに。ちゃんと意味を感じて歌ってほしいと思って。

― 自分を見つめる機会になるっていうか、そこに感情を入れられる自分ができていくっていうか・・・そこですかね。

そうですね。言葉であり、メッセージなんだっていうのを。

― それがヒメヒコの歌につながっていくわけですよね。

そうですね。

― いつも太郎さんが、その歌い方を一つ一つ細かく指導されていますけど、役者としての言葉の伝え方っていうのがあるのでね。そのへんがみんなの勉強ですよね。

とにかく「伝える」ってことなので。役者の仕事っていうのは、体を駆使して、何かを伝えていくってことですよね。伝わって初めて、そこに感動が生まれるわけなんで。「伝える」って、本当に簡単じゃないんですよ。

― そうですよね~。

しゃべるっていうのはできるんだけども、本当にそれが伝わるかどうかっていうのは、全然別の問題で、「表現」とか「伝える」とかって、そんなに学校とか家で学ぶ機会がないじゃないですか。

― そうですね。コミュニケーションとも違いますからね。

そうですね。案外、スピーチをすることってないじゃないですか。それって、卒業した後にどんな仕事についても役立つと思うんですよ。

― プレゼンなんかにすごくいいんじゃないですか?

得意だと思いますよ。

― 相手に自分の気持ちを伝えるってことで。

伝えるってことですよね。だから、言葉も選ぶんですよね。伝えるための言葉、伝わる言葉って。たまに思い浮かんだ言葉を羅列するのと、ちゃんと伝えるために言葉を選ぶのって、違いますよね。

― で選ぶためには、いろんな語彙だったり、言い方だったり、文化の影響もあったりとかするので、勉強して学んでいくのは大事ですよね。

あんまり機会ないですからね~。スピーチ力を鍛える機会って。これは最初からできる人いないわけで、意識して鍛えないといけないです。

― だから大統領とか、スピーチする時に練習したりするんですよね。

そうですね。「役者」のトレーニングするんですよね。

― あ、そうなんですね。

はい、演出家とか演劇の人がトレーニングするんですよ。政治家とかは。それも、わりとアメリカではポピュラーなことなんですけど、日本は遅れてますよね。結局、テレビで政治家で、力強く語っている人とそうでない人と、はっきり分かるじゃないですか。メッセージが伝わるかどうかってね。橋本さんとか強いですけどね。弁護士もそうだと思います。

― 聞いてる人が、ちゃんと考えさせられるものでないとですね。

そう。ちゃんと響くかどうか、そして分かりやすいかどうか。

― 私も太郎さんの練習の指導を聞いてて、あ、文化を伝えるってこういうことなんだなって、ほんっとに勉強になって、あの子たちが高校生でそれを学べるっていうのが、ものすごく宝だなって、貴重なことだと思います。そういう意味でも、この大隅にヒメヒコがあるっていることが、すごくいいことだな、と思って。

ありがとうございます。今日で言うと、スピーチのこととか自然の中に出て行ったりという、普通のミュージカルのレッスンからしたら寄り道ばっかりなんだけど、それは積極的にやっていって、どんな将来的な仕事に就いたとしても活かせることを身に付けてほしいなと。いつも言っているように、俳優養成所ではないので。地域を誇れて、自分を語れる、相手に自分の気持ちを伝えられる、そういう人間を育てていくことだと思っているんで。

― それは私、思うんですけど、結局、子ども達、生きる力というか、みんな社会に出て生きていかないといけないじゃないですか、そのための力をどこで付けるか、どうやって付けるかって、学んだことが生きる力になって活かされていく、というのが大事だと思うんですよね。社会に出て生きる力になるもの、それが「ヒメヒコで育まれるもの」なのかなって。就職のためにビジネスマナーを学ぶのも大事なんですけど、生きていくために「自分で」生きていかないといけない、その力を付けていくには、この大隅の「ヒメヒコ」は、素晴らしい環境だと思いますね。

でも、与えられたカリキュラムにそってやるレッスンではないので、その分厳しいんですよね。ちゃんと聞かれたことに答えていかないといけないし、自分のアイデアとか自分なりの見解とか、そういうことを求められるし。厳しいと思います。受け身では続かないんで。

― その力を、教えてもらって身に付けられるようにしていくってことですよね。卒業した先輩たちも含めて、先生方がいいですからね。ニライスタジオの方も含め。これからもずっと、前進していってほしいですね。

どんな時代も。

― 何があっても。

いろんなことがあると思うんですけど。

― 今回、舞台、劇団関係の方たちは、本当に大変だったと思うんですよ。

大変ですよ~・・・演劇・エンタメ業界は人を集めてなんぼの世界ですからね~。

― それがビジネスになってるからですね。大打撃ですね。

大打撃ですね~・・・。

― これからどんなふうになっていくんでしょうね。まだ落ち着いてないじゃないですか。街の方が大変なのかな。

ただ心配なのは、東京は拡大してるじゃないですか。それはちょっと、慣れですよね。だけど数値が出た時に、全国一律に基準が変わったりするから、こっちも影響が来るんですよね。それがちょっと心配ですね。緊急事態宣言とか出たら、できなくなりますからね。田舎でも。

― 政府も悩んでますよね。人がいなければ成り立たない商売があって、でも感染したらいけないし、っていう狭間で揺れてますよね。公演までもう少しなので、何とかできるといいですけどね~。

まあ、できる準備をするしかないですね。あとは運を天に任せて。

― 開演できるように心から祈っています。

ありがとうございます!

― 今日は貴重なお話、ありがとうございました。

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